新しい入れ歯を作る流れ
歯がなくなると、自分の歯の代わりが必要になります。欠損補綴には義歯、ブリッジ、インプラントがありますが、今回は義歯についてです。それぞれの特徴については以前お話ししたのでそちらをご覧下さい。
今までに入れ歯を作ったことがある方ならなんとなくご存知かもしれませんが、義歯は欲しいと思っても歯の欠損の数や場所によってはすぐにできないことがあります。治療回数かかり、それぞれに意味があります。
新義歯の作製に印象採得(型取り)を2回する理由や咬合採得(噛み合わせ)に使う道具など、治療の流れをお伝えします。
残存歯の確認
まずはいきなり義歯を作るのではなく、口腔内の環境を整えます。
歯周病や虫歯で保存が難しい歯は抜歯が必要になります。
また残す歯でもむし歯があれば被せ物を作るなど歯の形を整えます。
先に入れ歯を受け入れる準備をしないと、入れ歯を固定する歯の形が変わるなど口腔内の状態が変わると、入れ歯が入らなくなってしまいます。
概形印象
口腔内が整えば既成トレーを使って型取りをします。
既成トレーは誰にでもだいたい合うような形をしています。
当院では有歯顎用3サイズ、無歯顎用3サイズをそろえており、欠損歯が少ない時はこの既成トレーでの印象のみで充分な場合があります。
精密印象
前回採った型をもとに模型を作り、さらにそこから個人トレーを作成します。
その患者さん用に作った、オーダーメイドのトレーです。
この個人トレーにさらにワックスを使って、患者さんの口腔内で粘膜面や実際に筋肉を動かした状態の形にトレーを仕上げます。
このトレーが大きすぎても小さすぎても入れ歯の安定感は得られません。
義歯は被せ物などと異なり、柔らかい動く粘膜の上に装着するものなので患者さんとの共同作業で型取りをします。
咬合採得
噛み合わせの位置どりのことです。
義歯を作成するためには口腔内の噛み合わせ、上下顎の位置関係を口腔外で再現する必要があります。
上下で咬合している残存歯が少なかったり、無歯顎の場合は咬合床を使っていきます。
歯が少なくなってくると、無意識のうちに残存歯同士で噛み合うように顎の位置をずらして咬むことが癖になっていたり
噛み合わせが低くなって、口元が萎んでしまっている場合などがあります。
生理的に正しい顎の位置を目指して噛み合わせをとる必要があります。
咬合採得が上手くいっていないと、どんなに型取りが上手くても義歯の安定感は得られません。義歯が転覆しやすかったり、飲み込みが難しかったりなど問題が出てきやすいです。
試適
ここまでに上下の歯と粘膜の型取り、噛み合わせを採ってきました。
これをもとに仮の入れ歯を作ります。
この時はまだワックス上に歯を並べた状態です。
実際に口腔内に入れて、歯のバランスや噛み合わせの高さをみて必要であればワックス溶かすなどして形を整えます。
口元の張り感や歯の色味など審美的なところも患者様と確認をして、問題なければいよいよ完成です。
逆にここまできても大幅に修正が必要そうであれば、咬合採得や印象に戻ることもあります。
完成
当院では試適から完成までの間に約9日ほどもらっています。
完成してからも口腔内に入れて粘膜面や咬合の調整をします。
義歯の大変なところは完成までに時間がかかるのはもちろんですが、完成して終わりではないところです。
実際にお家でご飯を食べたり、長時間使ってみると何かしら不調が出る場合がほとんどです。
義歯調整
使った結果擦れて痛い、少し義歯が浮くなど原因がどこにあるのかをチェックして更なる調整をします。
また新しいものが口腔内に入るので慣れが必要になってきます。
自分の歯そのものではなくあくまでも道具を使いこなすイメージが必要なります。
本当の意味の完成は義歯調整を何度か繰り返した後になりますね。
義歯は治療回数も多く、完成後の慣れも必要です。
歯が欠損したり、入れ歯の安定が元々より悪くなったら作り替えの時期かもしれません。
場合によっては修理のみで問題ない時もあります。
1番の理想は定期検診に通っていただき、定期的に口腔内や義歯の状態をチェックすることですね。